第11章 人生儀礼
やってみればわかります その大切さ
■[大人の儀礼]
 2.神前結婚式



 『古事記』という日本最古の書物の中に書かれている神話には、日本の国の成り立ちからの出来事が伝えられています。

この中に伊邪那岐(いざなぎ)、伊邪那美(いざなみ)、男女のお二人の神さまは、天上の神々が示された「この未完成な国を立派なものにしなさい」とのお言葉によって、地上の「おのごろ島」に降りられたとき、そこに宮殿を建て、「天の御柱(あめのみはしら)」という天にまで届く聖なる柱を巡って結婚の儀が執り行われ、そこから日本の国土や山川草木をお生みになったと伝えられています。

 現在の神前結婚式は、その神話の精神を受け継いでいるのです。

すなわち、神前で結婚式を挙げることは、神話に伝えられる日本の発展の基礎を固められた、伊邪那岐、伊邪那美の二柱の神さまのご結婚と同じ意味、使命を持つものと考えられ、長い人生を共に助け合いながら社会に貢献して行くことを神さまにお誓いする、人生の最も大きな節目としての意義があります。

 神前結婚式の形が整えられたのは、室町時代からといわれています。ただそれは現在のように神社や結婚式場の儀式殿で行われるのではなく、各家庭の床の間がある座敷において行われていました。

平安時代の宮廷、貴族の間で執り行われてきた結婚の儀式は、今日の皇室のご婚儀に受け継がれていますが、一般には、家々の床の間のある座敷において行われていたのです。

床の間には伊邪那岐、伊邪那美の二神、或いは天照大御神、大国主命等の神名を記した掛け軸を掛け、その前にお祝いの品や種々のお供物を供え、その前で神酒を戴いて夫婦の固めの盃を交わす形のもので、公家や大名から一般民衆にも普及し、長く明治時代に至るまでの一般的な結婚式の形態でした。

現在広く行われている結婚式の形式は、明治三十三年、当時の皇太子殿下(後の大正天皇)と九条節子姫(後の貞明皇后)のご成婚に始まります。

宮中の歴史においてはじめて賢所(かしこどころ、天照大御神さまをおまつりする御殿)の神前で婚儀が行われ、この皇室のご婚儀を契機として民間においても、神社の神前で執り行われる神前結婚式が生まれ、それが次第に普及し現在のように定着してきたのです。

神前結婚式
 古くからのしきたりである結納を経て、先ずは神社や結婚式場に予約をします。大安や友引、先勝等の吉日を選びます。

神前でお祓いを受け、祝詞を奏上していただき、三々九度(さんさんくど)の盃を交わした後、新郎新婦は誓詞を読み上げ、神前に生涯の愛を誓います。

親族固めの盃を交わし、結婚が二人の間だけのことではなく、両親や親族に支えられ今の自分たちがあることに感謝します。

真の日本人として、地域社会の一員として認めてもらう大切な儀式であることを自覚します。

 近年、様々な形の結婚式が行われていますが、氏神さまに見守られ成長し結婚するわけですから、伝統と格式のある日本古来の神前結婚式を和装で挙げるのが最善といえます。

 文金高島田に角隠し(つのかくし)・白無垢(しろむく)姿の花嫁衣裳に込められた思いは、純真無垢な気持ちで嫁(とつ)ぎ、やさしい気持ちを持って、一日も早く嫁ぎ先の家風になじみ、幸せな一生を過ごせるようにとの願いが込められているのです。



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