第7章 先祖のまつり
 1.日本人は死んだらどこに行くの?



日(ひ)の本(もと)に生(あ)れ出(い)でにし益人(ますひと)は 神より出(い)でて神に入(い)るなり
(江戸時代の伊勢の神宮の神官 中西直方)

「祖先の神があってこそ生まれ出た自分、その自分もやがては祖先の神のもとへと帰っていくのだ。」
というこの歌は、日本人の死についての昔からの考え方を明確に表現しています。

民俗学の草分けといわれる柳田国男は、著書『先祖の話』のなかで、「日本人の死後の観念(かんねん)、即ち霊(れい)は永久に、この国土のうちに留まって、そう遠方へ行ってしまわないという信仰(しんこう)が、恐らくは、世の始めから、少なくとも今日まで、かなり根強くまだ持ち続けられている」と述べています。

つまり、日本人にとって、「死ぬ」ということは、仏教で説いているように、十万億土(おくど)のかなたに消え去っていくということではないのです。

死後、人はやがて祖霊(それい)となり、さらに祖先神(そせんしん)へと昂(たかま)っていき、この世の子孫の生活を見守っていて下さると考えてきました。



[前へ]第7章へ戻る
庶俣Tもくじ
帥gップページ

ヨ福島県神社庁