第7章 先祖のまつり
 7.仏式の葬儀は死者の慰霊ではないの?



 仏壇の飾付を見ますと、中央最上段に本尊仏(ほんぞんぶつ)が安置され、その手前下段に「位牌(いはい)」が置かれています。

このことは何を意味しているのでしょうか。

仏式葬は、天台宗、真言宗、曹洞宗では「得度式(とくどしき)」を意味しており、日蓮宗では、日蓮聖人の元へ送り出す「引導(いんどう)」が中心となり、浄土真宗では阿弥陀仏の本願力(ほんがんりき)によって、救われることを祈る「勤行(ごんぎょう)」の形式になっています。

つまり仏式葬は、仏の教えを聴(き)き学び、仏の徳を称(たた)え、帰依(きえ)して僧侶になるための「出家(しゅっけ)の儀式」なのです。

 多くの方は、日々仏壇(ぶつだん)のお釈迦様(しゃかさま)ではなく、ご先祖さまに祈り、お盆やお彼岸にはお墓参りを行います。
本来仏教では現世(げんせ)の煩悩(ぼんのう)から人々を救うことが目的であり、そのためには、現世への執着(しゅうちゃく)を断つことが必要なのですから、極楽(ごくらく)に行ってしまえば、死者の霊の居場所となる仏壇・位牌やお墓は要らないはずです。仏式葬を行われても、ほとんどの方は、死者が仏弟子となって修行に励んでいるとは考えていないでしょう。

また、仏壇は死者が仏弟子(ぶつでし)となるための修行の場であり、お墓は死者の記念碑・遺品倉であるとは考えていないでしょう。
そこは、死者・祖霊(それい)の鎮まる「神聖(しんせい)な所」と考えるのが日本人の素直な感情なのです。

死者の霊・祖霊(それい)は、私たちの生活する場の近くにとどまり、お盆には毎年、家に帰って来られると信ずるからこそ、盆棚(ぼんだな)を作り、迎え火(むかえび)を焚(た)いてお盆の行事を行うのです。

 お盆の心とは、亡くなられた方の霊、ご先祖の霊が、心おだやかに鎮(しず)まられるように慰霊を行い、先祖(せんぞ)の霊に感謝の誠を捧げ、家や家族をお守り下さるよう祈ることでありましょう。この心こそは、まさに日本固有の神道の「祖先崇拝」の考え方なのです。



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