第7章 先祖のまつり
 コラム
私たちは「いのち」をつなぐリレー選手



 近年、若者の心の乱れと、それによって引き起こされる、悲惨で凶悪な事件が大きな社会問題となっています。

 若者に、心のなかに崇高(すうこう)な理想をえがき、人生を充実させながら社会で立派に活躍して、美(うる)わしい幸せな家庭を築いていただくために、私たちに課せられた責任には大きなものがあります。

 日本人は遠い昔から、神さま、ご先祖(せんぞ)さまを敬い、感謝をする心を大切にしてきました。平穏な生活に感謝をしたり、日々の出来事を報告するなど、神棚(かみだな)や祖霊舎(みたまや、仏壇)に頭(こうべ)を垂れ、手を合わすことは、ごく自然な感情であり清らかな心のあらわれでもあります。

このような「敬神崇祖(けいしんすうそ)」の心をもって、神社のお祭りを守り伝え、あるいはお墓参りやご先祖の祭りを行ってきましたが、お祭りを行う大きな意義とは「感謝(かんしゃ)と慰霊(いれい)」の誠を捧(ささ)げることで神さまやご先祖さまと、自分との間の命の繋(つな)がりを確認し、家族の絆(きずな)を深めていくことにあります。

 親を通じて、遠いご先祖さまからの命を継承している私たちは、また社会的存在として決して一人で生きているのではありません。自分を取り巻く、家族や地域の人々とのいろいろな関係のもとに日々の生活を送っているのです。

 古来、日本人は家族や地域の共同体の「和」を大切にし、名誉を重んじてきました。何気無い不用意な自分の行為が、家族や地域の人の和を損(そこ)なわないように、自分を律(りつ)する自制心を高めるために、常に身を修(おさ)め、家を斉(ととの)えてきたのです。

 近年は個人主義の考え方が非常に強くなり、遠いご先祖から続いてきた家の意識や家族や親族の絆(きずな)の意識が希薄になってきています。

その結果、自分さえよければ、他人の苦しみや痛みをまったく無視するような風潮さえ生じてきました。被害者と加害者の間に、なんの関係も見られない殺傷行為や、社会に対する犯罪の多発傾向は、まさにこのことを証明しているように思えます。

 また、経済優先・物質万能主義による現代人の生活形態は、限りある界観天然資源を枯渇(こかつ)させ、環境を破壊させて止どまる所を知りません。

 日本人は、「人もまた、自然の一部である。」という世界観(せかいかん)のもとに、自然に優しく抱かれながら、山川草木はもとより、すべての生きとし生けるものと共に、生活をしてきたのです。

 人の心に自制心を回復し、共生の思想の重要性に気付くために、いま「お祭り」の効果に大きな期待がよせられています。



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